2010年
 つぶやき

8/1
◆手書き文字
 論文を送ってもらった礼状を書く。
 のたうつような,醜悪な文字が並ぶ。
 あれ,脳卒中の後のぼくの父の字に似ているぞ。
 父は達筆から一挙に転落したが
 ぼくは脳卒中になる前にゆっくり崩壊したみたい。

8/2
◆半常連
 近所の乾物屋で梅雨前はよく目刺しを買った。
 最近は家でご飯を炊かず,目刺しも食べない。
 (なにしろクスクス5kg 袋がなかなか減らない)
 だから,店の前を通りにくい。
 店のバーサンににっこりされると,申し訳ない気がする。
 やはり匿名のまま,すかして歩きたい。

8/3
◆牛丼戦争
 短期間限定ながら吉野家が270円,すき家が250円。
 こういう消耗戦,企業にとっての意味はよくわからない。
 ぼくはただ安さにひかれて,二つの店に入る。
 つまり,連日牛丼食べてます。
 あ,松屋(ここも250円)は鹿児島では見かけない。

8/4
◆汗だく
 風が吹かない時間帯がある。
 部屋にいても汗が噴き出す。
 そういえば,昔は「あせも」とかになったなあ。
 母につけてもらう天花粉の匂いを思い出す。
 (てんかふんの漢字,いま初めて知りました)

8/5
◆灰(cinder)が降る
 街の中心部(つまりアパートの近所)が火山灰で曇る。
 その中を歩かねばならないのは地獄だ。
 歩きながら「サンドリヨン」というフランス語を思い出す。
 フランスの田舎町の劇場で「Cendrillon」というポスターを見た。
 30年も前の話だ。
 知り合いになった人に「これ何ですか?」と尋ねると
 「え,有名な話なのに,日本では知られてないの?」と驚かれた。
 それは「灰かぶり姫」,英語でいえばシンデレラでした。

8/6
◆撤収
 図書館から借りながら読めなかった本がある。
 海外ミステリーで,評判のよかったやつ。
 おー,見つけた、見つけた,と喜んで借りた。
 でも,この二週間,ぜんぜん読む暇がない。
 新刊本だから,つぎの読み手に回すため返却。

8/7
◆フローリング
 家の床が火山灰でザラザラだ。
 畳の部屋じゃよくわからないが
 木の床だと目で見てもすぐわかる。
 鹿児島以外では味わえない生活を楽しむしかない。
 鹿児島の鹿児島らしさを毎日満喫しとります。

8/8
◆夏草や
 思えばいま一番の幸せは草むしりがないこと。
 とくに,一軒家に住んでたころは庭の雑草の元気よさに泣いた。
 庭もムダに広かった。
 草取りしないでいると,近所から苦情が来た。
 除草剤をまき散らしてやろうかと思ったよ。

8/9
◆夏野菜
 上京して,スーパーなどで野菜の値段をみると
 どれも鹿児島よりも安いぞ。
 鹿児島は農業県のくせに,メリットがないじゃん。

8/10
◆老い先のシミュレーション
 家の中でじっとしている。
 読む本があるから退屈なわけではない。
 ただ,人の役に立つことはしてないので
 そこらへんでちょっと罪悪感を感じる。
 つまり,まだ修行が足りない。

8/11
◆森
 家の近所,都立府中病院の裏を散歩する。
 木々が茂って,日中でも薄暗い。
 鹿児島にはこういう散策路がないなあ。
 と思いつつ歩きながら,蚊には刺される。

8/12
◆南京
 日本軍による大虐殺を否定するわけではないが
 万を超える死体の処理は大変だろうなと思う。
 映画「ジョン・ラーベ」や「南京!南京!」を観ると
 機銃掃射で中国人が山ほど殺される。
 (日本未公開の映画でもネット経由で観られます)
 一方,最近の中国の大地震のニュースを見ると
 死者ん千人のレベルで大騒ぎだ。

8/13
◆ The Best and the Brightest
 最小のコストで最大の成果(ベネフィット)を得たい。
 最適解を求める「計算」が上手にできるのが能吏だ。
 しかし,連中が国を誤らせたりする。
 日本の場合は,能吏というより小役人タイプが偉くなっていく。
 鹿児島の場合は,さらにその下の「兵隊教育」が盛んだ。
 開き直っているから,むしろすがすがしいぞ。

8/14
◆廃棄
 昔買ったパソコンなどを捨てる。
 愛着のある品々だが,捨てるとなったら捨てる。
 なにしろ,こちらは大洪水の体験者である。
 思い出の品は消えても生きていける。
 思い出のよすがが消えれば思い出さぬまでである。

8/15
◆お食事処
 鹿児島に遊びに行く人から尋ねられた。
 市内の中心部で,おいしい店はどこ?
 はて,観光客におすすめしたい店があるだろうか。
 豚しゃぶ「一二の三」は有楽町店に行ったことがあるという。
 ああ,もうそれなら,行くべき店はありません。

8/16
◆不慣れ
 ひどくはないが終日,軽い頭痛がする。
 たまたまエアコンのある部屋で寝て
 タイマーのセッティングをまちがえた。
 つまり,一晩中エアコンが動いていた。
 体がそれについていけなかったようだ。

8/17
◆Tシャツ
 インドネシアに行くたびに買ってきた。
 つまり,安物ばかり着ている。
 汗を吸わないやつは不快だ。
 汗を吸うやつは染みがすぐできる。
 着ていて気持ちがいいものは一つもない。

8/18
◆愛称
 路地裏を走るバスに乗って府中に行く。
 「ちゅうバス」と呼ばれる。(一乗り百円)
 国立市にも国分寺市にもコミュニティバスがある。
 それぞれ「くにっこバス」「ぶんバス」と呼ばれる。
 鹿児島市はそのまま「コミュニティバス」と名づけている。

8/19
◆実(じつ)のない会話
 9月にインドネシアに行く話をしたら
 お土産をよろしく〜,なんて言われた。
 場末のスナックのママさんとかが言いそうなセリフ。
 ふだん,そういう人とのおつきあいがないので
 一瞬,どう反応したらいいのか,迷っちゃいました。

8/20
◆マクドナルド
 一人で外国旅行をするときはよく行った。
 そういえば久しく食べてないなあ。
 近所の店に長蛇の列ができていた。
 期間限定でビッグマックが200円。
 列があればとりあえず並ぶ,という旧ソ連スタイルでぼくも並ぶ。

8/21
◆漂泊
 じつはそんなに一人旅は好きじゃない。
 その証拠に,きちんとした思い出が残っていない。
 路地裏が好きなので,わざと迷ったりしたが
 思い出づくりとしてはそれは失敗だったね。
 どこがどこだったか,イメージが混乱する。
 外国なのか国内なのかすら怪しい。

8/22
◆施錠
 駅前に駐めておいた自転車のカギをなくす。
 家まで1.5キロ,かついで歩いて汗だくになる。
 オンボロの自転車だからカギなどかける必要もなかったな。

8/23
◆忘却
 20年ほど前,スペインから家族あてに出した絵ハガキが見つかる。
 すごい田舎町に,一週間ほど滞在したときのものだ。
 町役場の写真がついているが,そうだっけ?という感じ。
 思い出のよすががあっても,ぼくの記憶力はこの調子である。

8/24
◆翻訳
 暑さのせいで能率が上がらぬ。
 しかし,さっさと終わらせないといけない。
 ちゃんと出版されるまでは油断ができない。
 過去に,二冊ほど分厚いのにアタックして
 いずれも陽の目を見なかった。
 あのときは共訳者のせいでポシャった。
 今回はひとりでやってるが,本屋の事情はよくわからぬ。
 編集者が「その気」のうちに渡したい。

8/25
◆味比べ
 そこらへんのスーパーで買った豆腐だが
 鹿児島で買う同レベルの豆腐よりおいしく感じる。
 そういえば、インスタントコーヒーだって違うぞ。
 同じネスカフェ香味焙煎でも味が違う。
 ただし,何がどう違うか表現できない自分のバカっぽさ。

8/26
◆電池切れ
 腕時計が動かなくなった。
 ぼくのは高級品じゃないから,突然止まった。
 高級品なら秒針の動きで慈善に察知できるらしい。
 夜だけど、どこかの店が開いてるかもしれないと
 チャリンコで駅前などをうろついたが,むなしかった。
 時計をはずせば腕がさびしいし
 つけてると,動かぬ時計をつい眺めちゃう。

8/27
◆蕎麦
 うどん屋の息子なので,うどんは大好きだ。
 けど,年をとってからは蕎麦も好きになった。
 学生時代は,ゲッてな感じでしたがね。
 国立市では,なんといっても更科甚五郎。
 冷やし谷保天(略して「冷やヤボ」)は絶品だと思う。
 食べてる途中も、食べた後も,幸福感がわいてくる。

8/28
◆車イス
 フランスのルルド(Lourdes)は霊験あらたかな泉で有名だ。
 病気の人,身体が不自由な人が多く集まる。
 映画「ルルド」(2009年)もそういう人の話。
 背景に出てくる電動の車イスに感心した。
 やたらパワフルでスピードも速そう。
 ぼくも父が晩年は車イスだったので,他人事ではない。
 ぼくが乗るとしたら,ああいうのに乗りたい。
 建物内でも公道でも,あれで暴走したい。

8/29
◆ブリコラージュ Bricolage
 車庫のシャッターの動きが悪い。
 修理は業者に頼めばいいと思うが
 それまで車が使えないのも困る。
 ってんで,シコシコ修理に取り組む。
 あちこち解体し,板きれを拾ってきて
 バカになったネジ穴を補強して,修理完了。
 もう業者を呼ぶ必要はないと胸を張るが
 家人は「あら、終わったの?」で終わり。

8/30
◆デジタル放送
 たくさんのチャンネルがある。
 ってことは,作品ごとの予算が下がるってことらしい。
 じっさい安そうな番組が多い。
 でも,海外の列車とか街なみ紹介とかはいいな。
 レポーターとか出ないやつ。
 お昼,ひとりでパンを食べながら,ぼーっと眺める。

8/31
◆微風
 一般的に高齢者はエアコンが嫌いだそうだ。
 本当かどうかしらんが,熱中症のニュースでそう言ってた。
 ぼくの場合は半分当たり。
 涼しい風でなくても,窓のカーテンを揺らす風がよい。

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